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親子でスプーン共有はNG?新たな研究でわかった事実とは

こんにちは。福岡県直方市の歯医者・小児歯科・矯正歯科「らいふ歯科クリニック」です。
赤ちゃんを育てる中で、「親と赤ちゃんが同じスプーンやコップを使ってはいけない」といったアドバイスを耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。これは、親の口腔内にいるむし歯の原因菌が、唾液を通じて赤ちゃんに感染するのを防ぐためだといわれています。しかし近年では、この食器の共有とむし歯予防の関係についてさまざまな研究や見解が出されており、必ずしも一面的な理解だけでは不十分であることが分かってきました。
今回は、赤ちゃんとの食器の共有とむし歯リスクの関係について、最新の研究や知見をもとに詳しく解説します。
食器の共有を避けるべきという考え方
「親と子どもがスプーンやフォーク、コップなどの食器を共有すると、むし歯菌が感染しやすくなる」という考え方は、以前から一般的に広まっていました。とくに問題視されていたのは「ミュータンス菌」という細菌で、これがむし歯の主な原因菌とされているためです。
確かに、親の唾液を通してミュータンス菌が赤ちゃんの口腔内に移行することは、複数の研究でも確認されています。しかし、近年ではその一方で、唾液の接触がもたらす健康面でのポジティブな側面についても注目が集まっています。
親の唾液がアレルギー予防につながる可能性も
近年発表された研究では、親の唾液に触れることが子どもの免疫システムに良い影響を与える可能性があるという報告もなされています。例えば、親がスプーンを使って離乳食を与えるなどの行動が、アレルギー予防に関連する免疫機能の発達を促すのではないかと考えられています。つまり、親の唾液を介した接触は、単にリスクだけでなく赤ちゃんの健康な成長に役立つ可能性も秘めているのです。
食器の共有以前に細菌は感染している
実際には、赤ちゃんへの口腔細菌の感染は、食器の共有が始まるよりも早い段階で起こっています。たとえば、生後4か月という早い時期に、母親の口腔細菌が赤ちゃんの口にすでに伝播していることが研究で確認されています。
多くの家庭では、離乳食の開始は生後5~6か月頃からです。したがって、食器を共有するよりも前に、親の唾液を通じた細菌感染は起こっていると考えられます。日々のスキンシップや赤ちゃんをあやす際のキスなど、日常的な親子のふれあいの中で、唾液の接触は避けようがないものでもあります。そのため、食器を分けることで細菌感染を完全に防ぐことは難しく、過度に神経質になる必要はないという見方も広がってきています。
ミュータンス菌だけがむし歯の原因ではない
むし歯の原因として広く知られているミュータンス菌ですが、実はそれだけがむし歯の原因菌ではありません。口腔内には数百種類もの細菌が存在し、その多くが酸を産生して歯を溶かす要因となり得ます。
また、口腔内環境の悪化は、単に菌の存在だけでなく、食生活や口腔ケアの習慣、さらには唾液の量や質、遺伝的要因など複数のファクターが重なって影響を及ぼします。したがって、特定の菌の感染を防ぐことだけに意識を向けすぎるのではなく、むし歯のリスク全体を考えた対策を講じることが重要です。
実際の研究結果から分かる食器の共有とむし歯の関係

日本の研究において、3歳児を対象とした調査では、親との食器の共有と、う蝕の有無との関連性は認められなかったという報告もあります。これは、むし歯の発症には食器の共有という単一の要因だけではなく、砂糖の摂取量や歯みがきの頻度、フッ化物の使用の有無など、多くの行動的・環境的要因が複雑に関与しているためです。
このような研究結果を踏まえると、「食器を共有しないようにする」という一つの対応だけで、むし歯のリスクを大きく下げられるというわけではないことが分かります。
むし歯予防の本質は日々の生活習慣にあり
親からの細菌感染を完全に防ぐことは難しい以上、むし歯を予防するためには、口腔内の環境を整えること、すなわち「むし歯菌が繁殖しにくい口内環境を作る」ことがカギになります。そのために大切なのが、次のような日常的な取り組みです。
● 砂糖を多く含む飲食物を控える
● 毎日の仕上げ磨きを親がしっかり行う
● フッ化物入りの歯磨き粉を適切に使用する
● 歯科医院での定期的な検診やフッ素塗布を受ける
とくにフッ化物の利用は、世界中の研究でもその予防効果が実証されており、推奨される方法です。日本でも4学会合同による推奨方法が出されており、年齢や発達に応じたフッ化物の活用法が紹介されています。
まとめ

赤ちゃんとの食器の共有は、確かに唾液を介した細菌感染のリスク要因のひとつではありますが、それだけでむし歯のすべてが決まるわけではありません。実際には、食器を共有する前から親の細菌はすでに赤ちゃんの口腔に伝わっており、共有を避けたからといって完全に防げるものではないのです。むし歯予防の本質は、食生活や歯みがき、フッ化物の使用といった日々の習慣にあります。過剰に心配するのではなく、親子のスキンシップや食事の時間を大切にしながら、日々のケアでむし歯から赤ちゃんの歯を守っていきましょう。
お子さんのお口の中で気になることがある方は、福岡県直方市の歯医者・小児歯科・矯正歯科「らいふ歯科クリニック」にお気軽にご相談ください。
当院では、むし歯・歯周病の治療だけでなく、歯並びや噛み合わせの治療も行って健康で笑顔あふれる人生[らいふ]を送っていただけるよう努めています。0歳からのむし歯予防や小児の矯正治療なども対応しています。
当院のホームページはこちら、Web予約も受け付けておりますので、ぜひご覧ください。